JATAC|特定非営利活動法人ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会

特定非営利活動法人ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会
Nonprofit Organization Japan Athletic Trainers Association for Certification

スポーツ外傷・障害予防の立場からスポーツを支えるために NPO法人JATAC事務局
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2010年11月01日

第1回米国アスレチックトレーナー研修

 平成9年9月7日から14日までの一週間、第1回JATAC海外アスレチックトレーニングワークショップが米国オレゴン州ポートランド市にあるポートランド州立大学で開催された。ポートランド市は人口130万のオレゴン州最大の都市で緑が多くバラの町としても知られている。高層建築が立ち並ぶダウンタウンの路地にも緑が多く心を和ませる町である。大陸から太平洋に注ぐコロンビア川とウィラメット川が町を横断し、人間が住むためのすべてに調和のとれた美しい町である。今回の研修会に参加したJATAC会員ならびに柔道整復師の参加者は以下の7名であった。
 坂本一雄(青森県)、洞口直(宮城県)、中島一 (千葉県)、原澤明(群馬県)、窪田勝(東京都)、 武田功(岡山県)、尾崎優(高知県)、
 JATAC関係者7名に加えて、千葉大学関係者3名ならびに東京YMCA社会体育専門学校関係者8名、そして今年10月から2代目事務局長となる菊地俊紀氏と団長の片岡幸雄JATAC副会長を含め総勢20名の研修旅行であった。
9月7日(1日目)
成田国際空港午後5時25分、一路ポートランド国際空港に向けて飛び立った。途中航路が変更されアンカレッジ空港に一時着陸するハプニングがあった。結局到着が5時間ほど遅れたものの無事9月7日の同日現地時間午後3時半頃ポートランド国際空港に到着した。通常であれば約8時間の飛行である。空港ではヘッドアスレチックトレーナーのJim Wallis氏ら大学関係者の出迎えを受けた。ようやく宿泊地〔ダブルトリーホテル〕に落ちつき6時からのレセプションに間に合った。ホテルは大学から数分の所にあり、プール、アスレチック施設、レストラン、バーなど素晴らしい施設を備えた緑に囲まれた快適なホテルであった。Wallis氏からワークショップのテキスト、IDカードが配布されいよいよ研修のムードが盛り上がってきた。
9月8日(2日目)
午前8時半に集合しWallis氏らから大学内の施設を案内された。ポートランド州立大学は都市型の大学でダウンタウンのほぼ真ん中にある。緑の多い公園をはさんで大学の建物が立ち並んでいる。9時から講義が開始された。通訳は日本人で同大学アシスタントトレーナーのAriko Iso氏と同大学のアスレチック課程の大学院を修了したMayumi Takreda氏の2名であった。午前中の講義は「アスレチック、傷害に関連した運動学的ならびに解剖学的専門用語の解説」「スポーツ傷害の評価の原則」及び「テーピング実技−その1:足首、アキレス腱、足底アーチのテーピング」が行われた。午後の講義は1時半から開始され、「スポーツ傷害発生時の救急処置」「急性傷害に対する処置」「NATA認定アスレチックトレーナーに関するトピックス」など午後5時終了。さらに夕食後7時半から「チームドクターの役割について」の講義がDr.Colville氏から行われ9時に終了した。講義終了後、Jim Wallis氏やMayumi Takreda氏らとウィラメット川の上に建てられた素敵なレストランで目前に広がるダウンタウンの美しい夜景を観ながら全員でドリンクを楽しんだ。その時あたかも我々の訪問を歓迎するかのように目前で20分間にわたって花火が打ち上げられた。夢のような光景に一同驚嘆!
9月9日(3日目)
午前中の講義は「治療器具の整備、法的規制」「上肢の傷害と評価法」が行われた。昼休み時間はスポーツメディスン・ルームが解放され、自由にテーピングの実習ができた。午後は「リハビリの概念、治療運動プログラムと治療器具のプログラム」「競技者の栄養プログラム」「テーピング実技−その2:膝関節、大腿部、腰部のテーピングの実習」が行われた
9月10日(4日目)
連日の英語攻めで頭が疲れたところで休養日。めいめいグループごとに行動。JATACメンバーの多くは午後からバスツアーで全米第2と言われる大きな滝Multnomah Fallesの見学に出かけた。途中サーモンの養魚所で1mほどもある無数のサーモンが飛び跳ねるのを見学。目前でみるMultnomah Fallesの壮大さに感嘆し、またコロンビア川の雄大で美しい景色を満喫しながら帰途につく。夕食はダウンタウンにある日本食レストランで久しぶりの日本の味に浸った。
9月11日(5日目)
午前中の予定が繰り上げ変更になり午前8時半からフットボール選手の練習前のテーピングと様々な処置がスポーツメディスン・ルームで行われたのを全員で見学した。そのままシビックスタジアムで行われた練習会場に出向きフットボールの練習や怪我をしている選手のリハビリトレーニングなどを目前で見学できた。フットボール練習時のアスレチックトレーナーの仕事の内容や活動範囲など参考になることが多かった。昼休み時間は再度スポーツメディスン・ルームが開放され、自由にテーピングの実習ができた。午後は「競技者に対する呼吸循環機能のトレーニング処方」「下肢傷害の評価法ならびに実習」が行われ、処置法などの質問が飛び交った。
9月12日(6日目)
いよいよ講習の最終日。午前中はAriko Iso氏の「日本におけるアスレチックトレーナーの実状、施設、社会的必要性」の講義があり、アメリカに比較して貧弱な日本のトレーナーの実状を指摘された。「傷害を受けた競技者の心理的対応」では、怪我をした競技者に対するフォローアップの重要性が強調された。「スポーツ情報とメディア」では、州立大学でさえアスレチック部門にかなりの力を注いでいるアメリカの大学スポーツの実状に驚き、またそのスタッフの多さとアメリカの大学スポーツの規模の大きさに驚嘆した。昼食はJim Wallis氏とJATACのメンバーで日本食をとりながら日本の話題で楽しんだ。午後は「ウエイトトレーニングの理論と実際」があり、最近完成した新しいノーチラス器具を整備したすばらしいトレーニング場をみて溜息がでてきた。「リハビリテーション運動プログラム」では、筋力トレーニングというイメージではなく、ボール、バランス台、その他の各種のリハのための運動プログラムが提供され興味深い講義であった。「テーピングの実習−その3」は上肢に関するもので、手の指、肘の部位が中心であった。その後2時間にわたって各部位の評価、テーピングの実習や質問のセッションが設けられた。5時に終了し、Jim Wallis氏宅で行われるバーベキューパーティーに繰り出した。雨もあがりガーデンでの食事と会話は楽しく、Jim Wallis氏のご家族や副学部長、学科長、2人の教授などとの交流は大変有意義であった。パーティーの最後に講習会修了証とネーム入りのTシャツや帽子など記念品が贈られた。パーティーの余波はホテルまで続き3人の教授を交えてバーで遅くまで会話を楽しんだ。
9月13日(7日目)
予定では夕方からフットボールの観戦であったが、連盟の予定で延期になってしまったのが残念であった。それに代わって午後7時から全員で2時間半のディナークルーズを楽しむことができた。あいにくの小雨であったがJim Wallis夫妻、Arikoさん、Mayumiさんを交えてウィラメット川を下りながらロマンチックなディナークルーズであった。この夜、JATACのメンバー達は柔道整復師の将来について武田、洞口氏の2人の大先輩を交えて遅くまで議論を続けワークショップの最後の夜を過ごした。異国で自らの将来を熱っぽく語るお2人の大先輩と若い柔道整復師たちの議論に私も引き込まれた。
9月14日(8日目)
いよいよ帰国の朝、前夜の余波で皆眠そうである。ホテルをチェックアウトし、午前11時にポートランド国際空港着。午後1時出発であったが、1時間ほど遅れることがわかり一同ショッピングに熱が入る。翌日15日の午後4時頃、無事成田国際空港に到着した。めいめい再会を約束し各地へ解散した。 今回のワークショップはアスレチックトレーニングの基礎講座であったが、米国のアスレチックトレーニングの全容がほぼ理解できた。これを土台 として一層の研修が積み重ねられることを期待したい。また今回の研修旅行では、研修に意欲的に参加された武田功吉備国際大学教授と洞口直日整宮城県会長のお2人の存在がとても大きかった。お2人のまじめな受講態度に若い柔道整復師のメンバーたちの意欲はますますかき立てられ、連日の議論にも重要な位置を占められた。お2人の参加に対して心から敬意を表したい。この研修が強い発信となってJATACの発展につながっていくことを願っている。(文責 片岡幸雄)

第1回JATAC海外アスレチックトレーニングワークショップに参加して

会員番号000406坂本一雄(青森県)
 平成9年9月7日からアメリカオレゴン州ポートランド州立大学に於いてアスレチックトレーニングセミナーが開かれた。JATACの片岡副会長始め総勢20名の参加者があった。オレゴン州はアメリカ全土の緑地、森林の約1割を占めるだけあって木々の緑が美しく、空が青く、空気がきれいな所であった。その中に大都市ではなく田舎町でもない、都市の便利さと田舎の優しさ、その両方を兼ね備えた町ポートランド市がある。オレゴンの雄大な自然の中にしっくり溶け込んでいて、市内の街路樹や花壇も美しいし、アメリカでは珍しい「セールスタックスのない街」である。市内は繁華街のダウンタウンを中心に、市内を流れるウィラメット川に対して、ストリートとアベニューという形で縦と横にきれいに碁盤の目状に整備されている。大学は中心部からすぐ近く、12ブロックすべてが緑地公園になっている敷地内にあり、勉強する環境には最適な場所にあった。夏休みを利用して我々の様にセミナーや研修、短期留学の日本人の姿もちらほら見受けられた。その中に「VIKINGS」の選手達のケアを行っているアスレチックトレーナー達がいた(※アメリカの大学スポーツは、競技種目に関わらず各大学で同じ名称を使用する。ポートランド州立大学のニックネームが「VIKINGS」である)。
 Jim Wallis 助教授をヘッドトレーナーとして、総勢15名(日本人はその中で女性3名が頑張っていた)のアシスタントトレーナーが、約350人の選手達相手に、毎日のように試合前後のケアにあたっていた。忙しい時には1日100人の選手を2〜3時間でこなしている時もあるという。初日に、全文英語の分厚いテキストブックを渡されたときは、講義についていけるかのか心配であったが、日本人アシスタントトレーナーのAriko IsoさんとMayumi Takredaさんのお二人の通訳のお陰で、言葉の障害も難なくクリアーすることができた。10人の講師陣の講義により、大学内でアスレチックトレーナーは何をすべきか、また、どういう位置づけにいるのか等、理論と実際の現場からの両面から教わることができた。アスレチックトレーナーと柔道整復師という、資格はお互いに違うものだが、競技選手や患者さんを一日でも早く治療して、元の現場や職場に復帰させるという共通の目的を持っている者同士、講義にもだいぶ熱が入っていた。講義は全部で24時間に及んだが、話が盛り上がり、講義後や昼休み時間にもWallis氏、Mayumiさん、Arikoさんらとディスカッションした。大学のトレーニングルーム(トリートメントやリハビリを行う所)は地下1階にあり、約50畳ほどのスペースにベッドが8台、電気治療器が4台、エアロバイクが2台、最新式高性能ステップマシーンが3台、超音波治療器が4台、大型製氷器が2台、ウォールプール(冷浴装置)等が備え付けてあり、接骨院の施術室とは少し違うイメージがした。
 研修期間中、VIKINGSのバレーボールチームとアメフトの練習試合を見学することが出来たが、試合の前には万全な態勢で臨みたい選手に対してアスレチックトレーナーが一生懸命トリートメントする姿が目の前で見られて、とても勉強になった。特に、9月11日にシビックスタジアムで行われたアメフトの練習では、5人のトレーナーがフィールドの各ポジションに待機して、選手の突発的な故障に対し、速やかに対応できるようにゲームを見守っていた。また、一人のトレーナーはフィールドの片隅で内側側副靱帯損傷のU度プラスの怪我をした選手に対して、別メニューのトレーニングエクササイズを行っていた。ここで私をカルチャーショックに陥らせたのは、MCL損傷U度プラスの選手をわずか3週間でフィールドで走らせたり、タックルの練習をさせているという現実だった。日本の柔道整復術では考えられないような治療のスピードの速さに、圧倒させられてしまった。アメフトはアメリカの花形スポーツであり、シーズンも短いため、うかうかしているとレギュラーの座をとられてしまうという危機感が選手やトレーナーを真剣にさせているのではないかと思われた。
アメリカでは約100万人の高校生競技者の内全スポーツにおける外傷頻度は50%であり、アメフトに関しては75%にも達するという。大学生では全スポーツが75%でアメフトは125%もの選手が何らかの怪我をするという報告もある。その中で年間に、死亡する選手が3〜4人、7〜8人が半身不随になっている。こういう状況からアスレチックトレーナーは高度な診断技術が必要になってくる。我々柔整師は治療技術は高くても、診断技術がまだまだ未熟だということを痛感させられた。スポーツ現場で命にかかわる仕事をしているトレーナーと、診療室のなかで患者さんが来るのを待っている柔整師との違いだと思う。また、大学内にはレントゲン室もあり、選手の怪我のX線写真は、最初にトレーナーが診て、その後週1回来るチームドクターに診断してもらうという、何ともうらやましい限りの環境がそろっていた。
 日本では、国が認める免許資格を持ったトレーナー制度は未だ確立されていない。しかし、スポーツ現場で健康管理が必要とされているのも現実である。そこに、国家資格を持ち、且つ治療もできる外傷のスペシャリストである我々「柔整師」が入り込めるのではないかと片岡教授らは以前から考えていたらしい。そこで今回のワークショップが実現したのだが、これらの要望に応えるためにも、このような研修は必要不可欠ではなかろうかと考える。そうすれば、今後予想される厳しい医療社会において、柔整師の未来は様々な圧力に押しつぶされることなしに、生き延びていくことができるのではなきるのではないだろうか。
 最後に今回のワークショップを企画・運営・同行して下さった千葉大学の片岡教授(本協会副会長)、吉備国際大学の武田功教授、医療法人社団洞口会の洞口正会長には大変感謝している次第である。3人の素晴らしい先生方と柔整師の将来について、様々なディスカッションが出来たことはワークショップ以上に得るものが大きかったように思える。

米国におけるアスレチックトレーナー活動

会員番号000449原澤明(群馬県)
[はじめに]我々JATACのメンバーは,9月,片岡副会長を先導に9日間に及ぶ研修を行った。そこで,アスレチックトレーナーセミナーを受講し,実際を視察し,大いに見識を広めることができた。予想以上の大きな収穫を得ることができたのでここに報告する。
[アスレチックトレーナーの業務の実際]
アスレチックトレーナーの仕事は多岐に亘る。主な業務として選手の健康管理,心理面の把握,試合を前提とした1年を通じてのコンディション作りがある。このコンディション作りは,チームのコーチや監督との連携の上で技術又は基礎体力の向上を目指す「テクニカルコンディショニング」と,チームドクターとの連携の上で障害者に対する競技復帰を前提とした「メディカルコンディショニング」に分けられ,どちらもチームにとけ込んで練習に参加し,チームの一員として信頼を得ていなければできない仕事である。その他,練習中または試合中に選手が負傷した際に行う応急処置,鑑別診断が重要な業務である。特にアメリカンフットボールのようなコンタクトスポーツにおいては重篤な障害が頻発し,年間アメリカの大学で必ず3〜4名が死亡し,重篤な障害者も7〜8名発生しているのが実状であり,現場ではそれらに対する処置も重要である。アスレチックトレーナーの大きな特徴は,担当しているスポーツに平素から参加し,競技特性を知り尽くし,日々選手の身体及び心理状態を把握し,良好な信頼関係を築いていることである。
[アメリカにおけるスポーツ]
 アメリカにとってスポーツとは,日本と比べものにならない程日々の生活に密着している。自分自身を取り戻す場であり,多くの人々がスポーツ愛好家である。スポーツで活躍して花形選手になることは誰しもが憧れるステイタスシンボルであり,即ビジネスにも成り得る環境が整っている。従って,アスレチックトレーナーのような仕事が受け入れられ,プロチーム,大学,高校各団体に専属のスタッフとして雇われているのである。
[柔整師の探る道]
 アメリカ研修で一番感じたことは,我々柔整師は選手に対する指導において,その選手個々の競技特性(競技又はポジション)を理解していないことである。そのため,選手が負傷したときでも,いざ治療を開始すると全く教科書通りの治療しかできず,選手のレベルが上がれば上がるほど不満を感じていることに気づいていない。アメリカでは,負傷したその瞬間から復帰するためのプログラムが組まれ,治療も練習の一部となっている。同じ負傷でも,個人及び競技の特性に応じて違うステップで完治するのである。このことは柔整師が取り組まなければならない課題である。
[まとめ]
アメリカでは,PSU(Portland State University)のヘッドトレーナーであり助教授のJimをはじめ,ATC(アスレチックトレーナー)の方々に非常に暖かい歓待を受けた。セミナーもレベルが高く,質疑も続出した充実した毎日であった。特に,試合や練習を実際に見学し,アスレチックトレーナーの活躍を目のあたりにできたことはとても有意義であった。この研修で,行き詰まった柔整師界に展望が開けたと思っている。この研修を機に,古き良き物は継承し,且つ新しいものを取り入れる勇気を持ち,現代に即した柔整師像を築くべく研鑽を積んでいきたい所存である。
講習1日目 @スポーツ傷害の評価の原則
Aテーピング実技その1:足首、アキレス腱、足底アーチのテーピング
Bスポーツ傷害発生時の救急処置
C急性傷害に対する処置
DNATA認定アスレチックトレーナーに関するトピックス
Eチームドクターの役割について
講習2日目 @治療器具の整備、法的規制
A上肢の傷害と評価法
Bリハビリの概念、治療運動プログラムと治療器具のプログラム
C競技者の栄養プログラム
Dテーピング実技その2:膝関節、大腿部、腰部
講習3日目 終日自由行動
講習4日目 @フットボール選手の練習前テーピング見学
Aフィールドでの選手リハビリトレーニングとフットボール練習見学
B競技者に対する呼吸循環機能のトレーニング処方
C下肢傷害の評価法ならびに実習
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写真その1
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写真その2
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写真その3
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写真その4
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写真その5
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写真その6
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posted by jatac-atc at 00:10| 海外研修