過去5回の中で今回が最も参加者が多く総勢30名の研修旅行となりました。アスレチック・トレーニング・セミナーには,本協会の杉山英雄会員(千葉県),高橋仙二会員(岐阜),愛知秀一会員(岐阜)の3名,日本スポーツ整復療法学会から松原伸行(東京都),桜田慎司(千葉県)両会員,千葉大学教官1名,学生1名,筑波大学大学院生1名,大阪体育大学学生2名,東京・名古屋YMCA社会体育専門学校学生11名の21名が参加しました。ACSMフィットネスアセスメント・セミナーには本協会原和正理事(長野県)が北海学園大学,酪農学園大学,東京商船大学の教官に混じり4日間の講習を受講しました。
研修参加報告1
長野県支部 原 和正第5回にして、ようやく念願の米国ワークショップに参加するチャンスを得ることができました。アスレチックトレーニングセミナーとACSMフィットネスアセスメントセミナーの2班に分かれる企画でした。両セミナーに参加したかったのですが不可能です。私自身そして柔道整復師であるアスレチックトレーナーは、怪我から社会復帰という「マイナスからゼロまでのコンディション作り」はどちらかというと得意としています。しかし「アスリートのコンディションをゼロからプラスに持っていくプログラミング作り」は、ともすると不得意そして不足している分野であることから、ACSMフィットネスアセスメントセミナーに今回は参加しました。
内容は、最大下運動時の呼吸循環系フィットネスの評価、身体組成の評価、筋及び骨格のフィットネス、高齢者のフィットネス評価、VO2maxテスト、代謝計算、ウエイトトレーニングの原則と実践的応用、パフォーマンス栄養学の講義と実習、さらにMrtoro YMCAと民間の24時間Fitness Club視察でした。朝9時から1時間の昼休みを入れて午後5時まで、時には時間をオーバーし教授いただいた講師のGary Brodowicz氏の熱心さに頭の下がる思いで感謝に堪えません。
また、早朝にもかかわらず選手のトレーニング前トリートメントの現場見学をさせてくれた、アスレチックトレーニングセミナーの教授であったJim Wallis氏の親切さにも感謝の気持ちでいっぱいです。
世界最先端である、米国スポーツ医学健康評価セミナーに参加し改めて実感させられたのは、これからの柔道整復師であるトレーナーは、アスリート及び高齢者を「ゼロからプラス」にいかにして導くかという 健康評価と運動処方の必要性でした。自らの施術所で主としてマイナスからゼロまで、フィールドでは主にゼロからプラスへと両方の守備範囲を持てるなら我々も鬼に金棒ではないでしょうか。柔道整復師のトレー ナーとしての需要は益々拡がるでありましょう。そして、なお一層の学習の大切さを思い知らされました。また、今回他のセミナーを参加受講された柔道整復師全員が大変優秀であったことに、これからの柔整界への期待が大きく膨らみました。終わりに、同行していただいた片岡教授、菊地事務局長、そして6名のACSMを共に受講された大学の先生方に感謝と御礼申し上げます。
研修参加報告2
岐阜県支部 高橋 仙二1)アスレチックトレーナーの立場
アメリカでは、コーチとトレーナーが完全に役割を分業していた。お互いを尊重し口は出さない。これは、トレーナーが職業として成り立っている証だと思われる。
日本のスポーツ現場では、トレーナーの職域があいまいで、自称トレーナーがそれぞれ得意なことを好き勝手やっている。資格職と認識されるには、業務範囲たるものが必要だと思った。
2)テーピングテクニック
テープの種類といい量といい「さすが本場」。とりわけそのテクニックには驚かされた。ベットに貼り付けて あらかじめストラップを作成したり、アンダーラップの途中に口で裂いたり、テープを折り曲げたり、折り返したり・・・。また、そのスピード、仕上がりの美しさは、まさに職人技であった。
3)アイシング
大きなクラッシュアイス製造機が2台あり、そこから氷をビニール袋に詰めて患部に当ててラッピング。その作業の多いこと。そんなに冷やして痛くない?と思えるほど、とにかく冷やしていた。そして、アメリカでは、ほとんど湿布を使わない事に驚いた。
4)ニュートラルポジション
オーストラリアの研修では、足関節におけるニュートラルポジションをしっかり学んだ。今回、腰部のリハビリテーションでも、しきりに「ニュートラルポジションが重要だ」と指摘があり、共通するものがあると感じた。
5)サプリメント
ショッピングセンターにサプリメント専門店があった。棚には、何百種類もの商品が、整然と美しく並べられ、ワゴンには、1ドル均一商品が山ずみされており、サプリメントは、こちらの文化だなと、感じた。ただ、講義のなかで「今、その良し悪しは、アメリカでも議論されている。」そうだ。
6)ボールパーク
大学から徒歩で行ける所に、マイナーリーグの野球場があった。私は、一人でそこへ行きビーバーズという地元チームを応援した。生涯忘れられない、とても楽しい時間を過ごした。もちろん、シアトルでの大リーグの試合も良かったが、イチローのサインボールが1000ドルには、驚いた。
7)おわりに
帰国後、さっそく新しいテープやアイシング道具を仕入れ、ストレッチやトレーニングのビデオを見直してスポーツ現場や施術所で実践している。購入してきたサプリメントやクリームも試している。疑問は、メールで先生に質問すると、答えが返ってくる。私の中では、アメリカ研修はまだ続いている。
年々研修が充実してくるのを感じます。我々が滞在している期間は現地も夏休みです。この時期はフットボール,バレーボール,サッカーがシーズン直前の調整を行っています。朝7時からトレーニングを開始するチームもあれば,午前午後の2部練習を行っているチームもありトレーナーズルームはいつも賑わっています。講習が始まったばかりのころは選手に「こいつらは何者だ?」といった雰囲気がありました(そう思っているのは私だけかもしれませんが)。しかし回を重ねるごとに,我々の団体は「日本のトレーナーの団体」であり,高い技術を持っているという認識になりつつあります。問題を抱えた選手の周りに自然に輪が出来上がりスタッフとケアの方法について議論が始まります。またマッサージ,超音波等に関してもJimから当たり前のように依頼されるようになりました。今回は「鍼」を打てる人はいないかとリクエストもかかりました。残念ながら鍼の実演はありませんでしたが。
私個人が一番心に残っているのはBull Penというバーに行った時のことです(前頁写真を撮影した場所)。毎週金曜日に大学の気の会う仲間でこのバーにきているそうで,今回特別に参加させてもらいました。我々の支払いはどうすれば良いのかと尋ねると,「日本の経済は今低迷している。日本の円は必要ない。」といってご馳走してくれました。これぞアメリカンジョークと妙に感心したものです。やはり今回の研修で忘れることができないのは「同時多発テロ」です。講習終了後LAに移動したグループは帰国した明後日にテロが起きました。実は当初,一週間遅く研修を行う予定でしたが,Jimの都合で一週間早くなったのです。もしかしたらしばらくの間ポートランドに釘付けでした。今回の件でJimからこんなメールが届きました。「狂人に世界中の人々の生活を変えることはできない。我々が何かを決めるときには常に50%のリスクが伴う。人生とは生きることであり恐れることではない。」犠牲者のご冥福をお祈りします。(文責:菊地)
講習 | アスレチックトレーニングセミナー | ACSM フィットネスアセスメントセミナー |
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講習1日目 | @女子サッカーチームの練習前ケア見学 ANIKE Sport Research Laboratory Lance Armstrong Fitness Center視察 Bリハビリテーションの原則 (Emad Aboujaoude) C腰部のリハビリテーション (Jonathan Huwe) Dチームドクターの義務・質疑応答 (Dr. Patricia Eiff,PSUチームドクター) |
@Metro YMCA視察 A最大下運動を用いた呼吸循環系フィットネスの評価 (Gary Brodowicz) |
講習2日目 | @下肢のリハビリテーション (Emad Aboujaoude) Aアスレチックテーピング実習:踵,アキレス腱,足底 (Jim Wallis) Bウエイトトレーニングの原則と実践的応用 (Randy Mi11er) C栄養学 (Gary Brodowicz) |
@24−hour Fitness Club 視察 A身体組成の評価 (Gary Brodowicz) Bウエイトトレーニングの原則と実践的応用 (Randy Mi11er) C栄養学 (Gary Brodowicz) |
講習3日目 | @非常時の処置 (Jim Wa11is) Aアスレチックテーピング実習:上肢,肘,手首 (Emad Aboujaoude) B怪我をした選手の心理 (Jonathan Huwe) Cアスレチックテーピング実習:膝,大腿 (Jim Wa11is ) D上肢のリハビリテーション (Jonathan Huwe) |
@筋及び骨格のフィットネス (Gary Brodowicz) A高齢者のフィットネスの評価 (Gary Brodowicz) |
講習4日目 | @フットボール公式戦前の調整練習見学 A練習後の治療見学,テーピング自由練習 BNATA・BOC (Emad Aboujaoude) Cコーチング、スタッフとの相五作用 (Tim Walsh, PSU フットボールヘッドコーチ) D脳震盪 (Ariko Iso) E競技のための用具・備品の準備 (Rick McReynolds,PSU備品管理責任者) F修了式、夕食会 |
@VO2max テスト (Gary Brodowicz) A代謝計算 (Gary Brodowicz) B実験室開放(実習) C修了式、夕食会 |
![]() 写真その1 |
![]() 写真その2 |
![]() 写真その3 |
![]() 写真その4 |
![]() 写真その5 |