JATAC NAGANOの会員56名は総力を挙げて通訳の蛭間前事務局長とともに30日間のトレーナー活動に従事した。
選手村フィットネスセンター内トレーニングルームでのサポート活動
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1.活動概要
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1)活動日時
期間:1998年1月24日の選手村開村日から2月22日の閉会式まで。
時間:午前7:30入村、7:40ミーティング、8:00業務開始、22:00業務終了、22:30退村、 15時間勤務であった。 -
2)常駐人員
毎日、トレーナー3名と通訳としてJATAC事務局長の計4名が全期間常駐した。 -
3)サービス内容
フィジカルチェック、マッサージ手技、テーピング、アイシング、温熱療法、ストレッチング、運動療法 -
4)設備
ベッド3台、ホットパック・低周波治療器1台、ビューティーモア2台、フリーザー1台(製氷用)、消耗 品一式 -
5)トリートメント手順
予約⇒ 問診⇒ アセスメント⇒ トリートメント⇒ 再アセスメント⇒ 記録⇒ 選手の満足度アンケート -
6)トリートメント内容
マッサージ手技とストレッチングが最も多く、オイルマッサージを要望した選手も多かった。負傷により 腫脹や関節水腫等の炎症を呈していたケースではアイシングを行い、アイスパックなどによるアイスマッ サージを行った。ドクターによる医学的処置が必要と判断した選手はメディカルセンターへ診療を依頼し た。 -
1)トリートメント利用者数
合計269名(男186、女83)、延べ人数529名であった。選手村に入村した選手数は3212名であっ たため、入村した選手の8.4%に当たる。 -
2)トリートメント利用回数>
利用回数は、1回が178名であり、最高リピーターは15回であった。 -
3)国別トリートメント者数>
全参加72ヶ国中、54ヶ国(75%)の選手らにトリートメントを行った。内訳としてカザフスタン27 名、日本25名、カナダ22名、米国14名、スウェーデン14名、ハンガリー10名、ロシア10名、 ルーマニア9名、フランス9名、ドイツ8名、ギリシャ8名、オーストリア8名と続いた。
ウインタースポーツ先進国・強豪国で、自国トレーナーが随伴した国の選手が多くトリートメントを求めて きた。 -
4)部位別で見たトリートメント者数
トリートメント部位として腰背部174名、右肩関節131名、右大腿部131名、左大腿部129名、左肩関節128 名、頸部107名、右下腿部90名、左下腿部89名であった。尚、スポーツマッサージにおいては原則として全 身に行った。 - 5)競技種目別受療者数では、最も多かったのがボブスレーで49名、フィギアスケート24名、アイスホッ ケー24名、フリースタイルスキー23名、スピードスケート22名、アルペンスキー21名、クロスカン トリースキー13名、バイアイスロン、リュージュの順であった。
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6)その他
トリートメントを受けたアスリートの時間帯では19時以降に集中する傾向があった。 -
3.おわりに
全72ヶ国毎に医務室とトレーナー室が準備され、選手団には帯同トレーナーも含まれていた。
にもかかわらずJATACの運営したトレーナールームに多くのアスリート(全参加選手中9.3%)が訪れた。
代表として日本に来たからには、今まで積み重ねてきた練習の成果を100%発揮したいと願うのは選手共通の 思いである。
スポーツに怪我と疲労は付きものであり、競技歴が長くなるほど怪我の頻度も高くなる。怪我で休養を余儀 なくさせられた選手は激痛と隣合わせの時期も経験したと思われる。
痛みや疲労または筋の柔軟性欠如は筋運動の妨げとなるため一刻も早く除去したいものである。
大会中の服薬にはリスクがあるため、マッサージなど徒手的または温熱等の保存的療法に頼らざる得ないの が現状である。
今回、全参加選手の9.3%がトレーナールームを訪れた。このことは医療的処置を求めたのではなく、医療と は異なる分野の対処法を求めていたと思われる。
おそらく疲労と柔軟性欠如は筋運動を妨げるので、その対処法を期待していたと考えられる。
また時間帯でトレーナー室を見ると、19時以降に集中していた。
日中の練習で疲労したならば、早めに取り除き、翌日は筋の弾力性を含め体調を最良な状態に回復し維持し たいと願うのは自然な事であり、夜間は自由時間となったためトレーナー室の利用が集中したと思われる。
競技において微妙な差で勝敗が決する事がある。選手にとって筋運動のコンディショニング調整を担うト レーナーは、有益な存在になれたものと思う。
今回、手探りの状態から始動し、滞りなく無事に閉会式を迎えられ大きな感動と感激を得られ実に光栄な思 い出となった。JATAC NAGANOの会員らはトップ選手の筋肉を触れて確認できたため、大きな糧となり、ア ンケートの結果から自分の技法に自信が得られたと確信している。
2.活動結果
南長野運動公園体育館トレーニングルームのサポート活動
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1.活動概要
開閉会式会場として利用されたが、体育館、トレーニングルーム、プールが設けられている。
我々は、トレーニング機器の使用説明や安全使用サポート、介助などを担当した。なお、フィットネスセン ターにも同一の機種のトレーニング機器を設置し、某スポーツメーカーがオリンピックのゴールドスポン サーであり運営を主体的に担当し我々は補助的サポート活動を行った。 -
2.活動結果
1)南長野運動公園の選手の利用状況
利用者合計1854名(実利用者1625名)、内訳では、体育館利用者742名、トレーニングルーム利用者690 名、プール利用者407名であった。
2)トレーニングルームの機種別利用者状況
エアロ系ルーム、マシーン系ルーム、フリーウエイト系の3つに区分され、各部屋に会員1名が担当した。フ リーウエイト系の利用割合が最も高く8種で1148名、中でもパワーゲイジステーション247名、ベンチプレス ステーション235名、スミスプレス162名の利用であった。
次いでウエイトマシーン系12種で941名、プロウンレッグカール108名、チェストプレス103名、レッグエク ステンション99名、エアロビック系4種の利用度が最も低く330名、バイク157名、エクサートトラック95名 であった。
国別のトレーニングマシーン利用状況は、フィットネスルームとの合計でウクライナが691名で最も多く、カ ザフスタンの549名、ロシア493名で、日本は357名の利用があった。国別選手1人当たりの利用回数はベル ギーが19回、モナコ18.8回、イラン16回、日本2.1回であった。 -
3.その他
フリーウエイトトレーニングで各国の練習方法に著しい相違が見られ参考になったし、トレーニング機器の 使用法を全く知らない選手も訪れた。ボブスレーのメダリストは競技期間中であっても最大負荷でのパワー トレーニングを熱心に行っており興味をひいた。
多くのトップアスリートがトレーニング機器を利用した。そのトレーニング方法は国籍により異なってお り、トレーニングが日常の生活の一部であるかのように明るく楽しみながら行っていたのが印象に深く残っ た。 -
4.おわりに
今回、選手らのトレーニング方法を見る事ができた。また海外の帯同トレーナーの活動を見る事もできた。 ここで得られた知見と体験は、地域でのトレーナー活動へ役立てる事が出来るために、素晴らしい収穫と なった。
本大会参画の背景には、長野県教育委員会と長野県体育協会から後押しして頂いた事。
またJATAC NAGANOは地域住民のスポーツを支える団体として国体への帯同ボランティアや、大小のスポー ツ現場に出向いた会員による実践活動が認められた結果だと推察する。
NAOCを始めとし、ご支援を頂いた皆様に心よりお礼を申しあげます。
(JATAC NAGANO:原 和正)