JATAC副会長 片岡幸雄
平成25年8月26日〜9月2日の1週間、20回目の米国アスレチックトレーニングの研修会に10名の若者(宝塚医療大学生5名、横浜医療専門学校生1名、順天堂大学スポーツ科学学生2名、法政大学スポーツ科学学生1名、JATAC会員御子息1名)を引率して米国オレゴン州ポートランド市にあるポートランド州立大学(PSU)を2年ぶりに訪ねた。今回の研修会は記念すべき20回目のワークショップである。
出発前に、歴代講師を務めてくれたゲリー・ブロドビッツ教授(スポーツ生理学)が交通事故で大怪我をして治療中であり、ワークショップの講師は無理である旨の連絡を受けた。友人のお見舞いをも心に秘めながら成田空港を出発した。同行の蛭間理事(帝京大学准教授)が1日遅れの出発となり、小生が一人で10名を引率することになった。成田空港にはワークショップ担当の工藤理事(順天堂大学准教授)が来てくれて歳々にわたり出国手続き等でお世話になった。
到着(8月26日):15時30分デルタ航空618便で一路オレゴンへ。翌朝8時50分ポートランド国際空港に到着する。全員無事入国審査をパスしてオレゴンの地に足を踏み入れた。今回の研修は例年実施していた解剖実習(シアトル)を取りやめ、AT研修だけに絞った。ポートランド国際空港ではジム先生(同大学ヘッドトレーナー)とラリー先生(同大学名誉教授、生理学)の出迎えを受け、参加者の荷物等の運搬を担ってくれた。宿舎に行く前に、参加者全員でマルトノーマ の滝やビスタハウス等を見学し、オレゴンの大自然を楽しんだ。
新しい大学の宿舎に向かい、各自部屋割りを済ませ、ジム先生から明日からの研修会資料、記念Tシャツ等をもらい部屋に落ち着く。夕方、大学内にあるレストランで数人の講師の先生を交えて夕食をとる(最初のアメリカン・フッド)。夕食後、参加者とともに近くにあるセイフ・ウエイ(スーパーマーケット)へ行き、食料等を買い込む。研修会では食料調達法を最初に教えることは必須である。昔のドミトリー(宿舎)と違って最近では殆どの部屋に冷蔵庫と電子レンジがあるので各自の食事計画にはそれほど困らない。
たくさん買い物をジム先生が宿舎に車で運んでくれた。ついでに小生の部屋に参加者全員が集合し、ジム先生とビールを飲みながら(20歳以上だけ)楽しく歓談する。学生たちにとってジム先生との打ち解けた楽しい最初の晩であった。
講習第1日目(8月27日):時差ぼけが残る早朝7時からスポーツ・メデスンルームで男子フットボールや女子サッカー選手の練習前のケアーを見学する。逞しく筋骨隆々なる大きな男子フットボール選手を目の前にして全員無言。8時からウエイトトレーニングルームでスコット先生の「体力トレーニング」(ウエイトトレーニング、敏捷性トレーニング、サーキットトレーニングなど)の講習が始まる。普段経験していないトレーニング実技に汗だく。最後に、当大学の女子サッカーチーム30名ほどの集団サーキットトレーニングに圧倒され、ただただ見とれるだけ。通訳の蛭間理事はまだ未到着、急遽ラリー先生(生理学専攻、彼の奥さんは日系3世、先生は日本語を愛し、ときどき早稲田大学へ客員教授として来日している)に依頼する。小生も側面から援助しつつ終了する。待ちに待った蛭間理事が到着。
11時過ぎ、ナイキの本社を訪問する。靴メーカーとしての歴史、各種スポーツのメモリアル、従業員のためのスポーツ施設、治療施設等どれをとっても一流である。米国スポーツ企業の圧倒的大きさ・強さを見せつけられる。
NIKE本社訪問のもう一つの楽しみはナイキ職員用でのショッピングである。(毎回、ジム先生のご尽力により実現)
安さにつられてたくさんお土産を購入したようだ(まだ研修会初日)。
夜は、全員でダウンタウンを散歩し夕食。
宿舎へ帰宅後、蛭間先生を交えて、ミーテイングとテーピング実習を2時間。
講習第2日目(8月28日):
8時40分集合、バスでローズ・ガーデン(Trail BRAZER:プロバスケットボールの本拠地)へ向かう。選手のロッカールーム、医療室、全米向けTV放送室、その他これまでにない細部の施設を見学できた。これもジム先生のご尽力。大学へ戻り、午前中の講義開始、ジョナサン先生の「リハビリテーションの概念」の講義と実技が始まる。実技は実に興味深い内容が満載で蛭間先生の名通訳もあり参加者は興味深々、集中する。
ジム先生、ランデイ先生とともにジム先生のひり息子のカイルさんがシェフをやっている店で昼食。4歳の頃から知っているカイルさん、9月にご結婚とのこと、幸せをお祈りする。
午後はジム先生の講義である。「アスレチックトレーナーの義務とは?」「膝傷害の基本的概念と評価」「足関節のテーピング」など3時間連続の講義と実技である。蛭間先生の名通訳もあり相変わらず初心者にもわかりやすいレクチャーである。
夕食は、バスで少し遠出し、すてきなレストラン「ケネデイ・スクール」で、ラリー先生ご夫妻、ジム先生の素敵なガールフレンドのバーバラさんを交え、歴史ある館でのアメリカン・デイナーを楽しんだ。
8月29日:待ちに待ったフリー・デ―:
久しぶりに朝寝坊ができると期待していた参加者たち。団長から集合ラッパ。8時30分に全員集合がかかる。朝の新鮮な空気の中、ウイラメット川沿いを散歩する。団長から、昔から日本の商船
が太平洋を渡りこの川に上ってくることなど、日本とのかかわりが深い都市であることなど。
デイ・パスを5ドルで買い市内を走る電車MAXに乗り、市内見物。ビッグモールのロイドセンターで自由時間、ショッピング、昼食など午後1時までリラックスタイム。開拓時代そのままの建物、内部を残すSTATION(ポートランド駅)を見学。
夕方のフットボールの試合まで宿舎で自由時間だ。ジム先生から電話あり、旧友の生理学教授のヒルマン先生からフットボール試合の前に、球場近くのブルペン(大衆酒場)で逢いたいと電話が入る。蛭間先生に球場まで学生の誘導をお願いして一足早く宿舎を出る。ブルペンには数人の旧友(ポートランド州立大学関係者)が集まり、楽しい夕時を過ごした。遅れて蛭間先生も合流する。ゲームはPSU(ポートランド州立大学)がEAST OREGON 大学に大勝する。
講習第3日目(8月30日):
午前中の講義は、ラリー先生の評判の講義「運動時の血圧調節」の話だ。大学院生2名の協力を得て、有酸素および無酸素的運動、ISOMETRIC運動時の血圧変化の比較実験である。3班に分かれての実験し、その結果および考察を発表し最優秀班が決まる。自然科学者ラリー先生の真骨頂だ。学生にとって実験データーを計測する大切さを学んだようだ。続いて、リック氏によるフットボール装具の話、ランデイ先生の「体力テスト」の話で今日の講義は終わった。
ラリーご夫妻、ランデイ先生,ジム先生、蛭間先生らと交通事故で怪我をしたゲリー先生宅にお見舞いに行く。骨盤骨折のひどい怪我(全治6ケ月)と聞いていたが車椅子で迎えてくれた。とても元気の様子なので一安心。
講習第4日目(8月31日)
早朝6時半から1時間、ラボで練習前のケアー観察、続いて9時から3時間、ジム先生の「膝および手関節のテーピング実技」テーピング実習にはとても興味を持って取り組んでいた。(毎夜、宿舎で遅くまで実習した成果を見せたい?)午後は、ランデイ先生の「調整力トレーニングの実技」だ。相変わらず先生の実技は面白い。
午後5時、終了式とお別れのBBQガーデン・パーテーに全員ジム先生宅に向かう。講師の先生方やジム先生のご親族たちがパーテーを盛り上げてくれた。
冒頭、いつものように、Jim先生からこの研修会のきっかけを作った故ミラン・スバボーダー教授(ポートランド州立大学体育学部副学部長、スポーツ生理学)と片岡副会長の関係の話からこの会が始まる。参加者一人一人、研修終了証をもらい世話になった先生方やトレーナーとの記念写真を楽しむ。若い学生にとって異国での良い思い出である。いろいろ失敗もしたがこれも勉強のうち。
緊張の連続であった1週間の研修もこれが最後の夜。人と人との出会いと様々な経験が人を成長させてくれる研修であった。
JATACのAT研修に参加して
順天堂大学スポーツ科学2年 石井優衣、松井佑希子
第20回目のJATAC米国オレゴンアスレチックトレーニング研修を経て私たちは多くのことを学びました。一番の学びはアメリカと日本の差です。CSCSであるSCOTTさんのコンデイショニングテストでは日本で見たことのない道具を使ってアライメントを行ったことやPSU(ポートランド州立大学)の女子サッカー選手のトレーニングを見学したしたこと、トリートメントルームで実際に選手のケアーをしているところなどを見ることが出来、体力づくりの一連の流れを見て体験し学ぶことができました。JIMさんのテーピングの授業も実際に自分たちの手でテーピングすることでSKILL UPも出来たと実感しています。RANDYさんのバランスボールを使った授業も楽しみながら出来ました。1つの動きに対して様々な角度からみることによってその人のキャリアや筋力バランスをアライメントでき感銘を受けました。授業以外にもPSUのアメフットの観戦やオレゴン州の各地を観光することも出来、とても貴重な体験をすることができました。こうしてこの研修が出来たのも片岡先生をはじめとし講師の方々、JATACの方々、またともに6泊8日を過ごした参加者のおかげです。6日間本当にあっという間でした。ありがとうございました。