東北ブロック研修会 投球障害セミナーin岩手開催報告(令和6年3月30〜31日 開催)
3月30〜31日に岩手県北上市にて東北支部研修会投球障害セミナーを開催しました。
30日の講師には岩手県奥州市で整形外科を営んでいる大歳憲一氏をお招きし投球障害の病態、メカニズムについてご講演頂きました。
講義の中では近年、ジュニア期で問題になっているOCD(離断性骨軟骨炎)に触れ近年外傷説が濃厚であるという内容が印象的でした。講義の最後には社会人選手をモデルにして徒手検査とエコーを使った診察、手技を用いた簡易な治療の様子を披露して頂きました。
31日は福岡県で野球専門の理学療法士として活動している久保田正一氏に投球障害を起こしやすい投球フォームの特徴についてご講演頂きました。
講演の中で投球障害についてはメカニカルストレス、オーバーユースを分けて考えることで、トレーナー、セラピストの立場から選手とどのように関わるかのヒントを頂きました。
また、パフォーマンス部分にも触れ球速には様々な要素があり、必ずしもメカニズムが優れているわけではないが一部分が秀でているだけでもパフォーマンスが高い選手がいる説明し実際の選手のフォームを動画で見ながら解説しました。
その中で「投球障害が少ないフォーム≠パフォーマンスが高い」という部分は選手に関わる立場として非常に重要な部分であった感じています。
この2日間で総数34名の方にご参加頂きました。これも講師が素晴らしかった事が一番の要因ですがコロナ禍で普及したオンラインが講演を聞くだけの内容であれば補完できる現状があることを感じ、徒手検査、エコーでの実技を交えた評価、そして体を動かしながらの投球フォームの確認などオフラインでしか出来ない内容にこだわった事も要因の一つだと感じています。
今後も多くの人を集めJATACとして同士を増やして行くためには情報のアップデートはもちろん、今のトレーナー、セラピストが何を求めているのか考え提供することも非常に重要なのだと感じる内容になりました。
報告:山内春雄 (JATAC岩手支部 支部長)
 東北ブロック研修会の様子01 |
 東北ブロック研修会の様子02
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愛知支部研修会 報告(令和6年3月20日 開催)
愛知支部としては久し振りのスポーツ現場におけるinjury;傷害を取り扱った内容の講習会となった。今回は膝と下腿部・足関節に注目して豊川市民病院;整形外科部長の「漢成先生をお招きしてご講演頂いた。JATAC支部会員と会員外の関係者ら16名が集って熱心に拝聴した。
「先生は日本スポーツ協会認定スポーツドクターの他、AOtraumaの上級会員でもいらしてスポーツ競技会;現場や災害時の様々な外傷からのリハビリ等に非常に精通しておられます。ドクターが担当する手術等の治療やリハビリ、また我々が担当するにふさわしい運動療法的なメソッドやその留意点などに関して同業の医師や我々にもズバズバと忖度する事のない物言いで非常に分かり易く講演頂きました。
我々が扱える症例、そうでない物の区別。また常に変わりゆく医療現場の現状から先生自らが「医療職である以上ずっと勉強」と言ってみえた事。
そして私達にも「常にブラッシュアップして行かなきゃ」と何度も指摘をして下さった事が印象的であった。
愛知支部では現在特に社会人リーグのバドミントンに年間を通してのサポートを行っている。その中で頻発して起きうるアキレス腱断裂の手術適応や我々の保存療法への期待などもお示し下さった。膝の損傷をはじめ足首損傷にも惜しみなく教えて下さり私共には大きな実りある90分であった。
午後からは中島会員からバドミントンにおける肩関節のバイオメカニクスのお話。大野会員からは膝関節の解剖から膝への更なる理解を深める講演内容となり今後への期待の高まる1日となった。
JATAC本部講習会 報告レポート (大阪・2023)
日時:2023年12月10日(日)10:00〜16:30
場所:平成医療学園専門学校(大阪市北区)
T部:「各種アーチのテーピング」
講師:牛島 詳力(柔道整復師/ NATA-ATC:上武大学准教授・JATAC本部理事)
ランニング障害の入り口とも言えるアーチ低下、足底腱膜炎に対し段階ごとに異なる素材によるテーピング方法について学びました。実際に現場で使われている基本的なテーピングから裏技までを伝授頂きました。足底のアーチが低下すると下肢への負担が増え、怪我に繋がる為、症状が出る前から予防的に使う方法、症状が出てからの対処法について学びました。具体的にはホワイトテープを使った母趾のMP関節と踵骨を近づけて足底腱膜にかかるストレスを軽減させる巻き方です。続いて、伸縮テープでのアーチの作り方のデモンストレーションがおこなわれました。足底縦アーチだけでなく、横アーチも治療、予防に重要であること、足関節背屈位をキープしながら巻くことがポイントであることを学びました。
U部:「超音波治療器の基礎とスポーツ外傷への活用法」
講師:佐藤 勇治(柔道整復師:有限会社ネオインベント取締役・整復操作実用研究会主宰)
超音波治療のメカニズムや生体反応に関する最新の知見と、柔道整復師としての視点によるスポーツ外傷(筋炎など)への対応法を教授いただきました。超音波治療はメカニズムを熟知することで幅広く使えることを学びました。驚いたのがスポーツ外傷への対処法で、今まで見たことが無い手技でした。成長期の子供たちは未成熟な為に怪我をした時の扱いも慎重に行うべきで早めの治療が必要であるとのことです。例えば肘痛は手根骨のズレが原因であることがあり、18歳までにその部分を修正しなければ背側のズレがそのままになり痛みが引かなくなる。よって、怪我をしない為に関節のアライメントを正すことと、エクササイズが必要であることを学びました。腓腹筋痛は距骨と踵骨のズレが原因で、足底のアーチが崩れることで発生する。これを人工的に距骨と踵骨をずらすことで作り出すという見たことのないことを起こしていました。外反母趾は第一中足骨の捻じれを戻さなければ治らないとのことです。アライメントのズレを戻すことであらゆる痛みを取り除くという、柔道整復師ならではのテクニックを学ぶことができました。ただ、簡単に習得できる技術ではないように感じました。
V部:「MLB球団での投球障害予防最前線」
講師:小柳 正信(NATA-ATC:ロスアンジェルス・エンジェルス アスレティックトレーナー)
MLB 球団での投球障害予防の取り組みについて、実技を交えてご教授いただきました。ご存じのようにボールは肩関節と肘関節だけを使って投げるわけではなく下肢からの運動連鎖によって投げられています。その為に安定した肩関節動作が必要で、この安定性が失われると棘上筋腱炎や上腕二頭筋長頭腱炎など、多くの症状が引き起こされます。そこで肩甲胸郭関節と肩甲上腕関節の関係が重要となります。この関係を正常に保つためのメジャーリーグで行われているトレーニングをご教授頂きました。
MLB流即現場で使える肩肘障害予防エクササイズをご紹介いたします。
• 3 SHOULDER TUBING EXERCISES
• 5 SHOULDER EMMRE
(ECCENTRIC MANUAL MUSCLE RESISTIVE EXERCISES)
• 6 FOREARM TUBING EXERCISES
• 6 FOREARM MMRE
(MANUAL MUSCLE RESISTIVE EXERCISES)
ポイントは投球動作で肩甲骨は下肢や体幹部で発生した大きなエネルギーを上肢から指先まで伝達する、運動連鎖の重要な一端を担う。この肩甲骨の動きを自身でイメージしながらエクササイズしなければ効果は得られないことを学びました。
 講演の様子01 |
 講演の様子02
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 講演の様子03 |
 講演の様子04 |
JATAC九州ブロック大会2023開催報告
令和5年10月22日(日)、秋晴れの陽気が心地よい天候の中、JATAC九州では実に4年ぶりとなる「完全対面型」講習会を福岡医療専門学校にて福岡支部主幹で開催した。
今回の大会趣旨としては、私達アスレチックトレーナーに出来る「可能性」を発見できる場として、トレーナーとしてご活躍される会員外の方、これから「スポーツ現場に参加してみよう」と言う方に広く参加を呼びかけ【活躍するATの力】と題し、午前の部はJATAC会員の活動報告と吉留大介鹿児島支部長による基調講演Tを、午後からは基調講演U丸山陽介長崎支部長とトレーナーバックを持ち寄っての【トレナーディスカッション】と言う構成で行った。
会員の活動報告では狙ったわけではないが「空手大会救護の活動報告」堤会員(佐賀支部)、「柔道の外傷」久芳会員(山口支部)、「中学軟式野球クラブチームにおけるトレーナー活動報告」溝口会員(熊本支部)、「福岡マラソンにおけるケア活動報告」武富会員(福岡支部)、「LIVEトレーナー活動の軌跡」高田会員(福岡支部)と、フルコンタクト・リミテッドコンタクト・ノンコンタクトのバランスの良い活動報告となった。
基調講演T 吉留大倫鹿児島支部長による【アスレチックトレーナーが知っておきたいスポーツ外傷とエコー活用法】では、フルコンタクト競技現場における外傷後の競技復帰の判断や、種目による「痛みの閾値の違い」やポータブルエコーを用いた筋膜癒着部の施術後の筋膜滑走変化、筋繊維と鍼の穿刺確認が目視出来る映像は興味深く、エコーの有用性の再確認が参加者皆で共有出来た。
お昼休みを挟み、午後からの基調講演U 丸山陽介長崎支部長による【暑熱環境下でのトレーナー活動】では
「労作性熱中症」主に、NATAが推奨する「予防・評価・治療」のために必要な科学的適用可能なアプローチと活動復帰のガイドラインを共有した。また私達アスレチックトレーナーは、労作性熱中症は未だに多くのアスリートを苦しめ、労作性熱射病においては「スポーツ中の突然死」を引き起こす主要な原因の1つであり続けている事に留意しなくてはならない事を確認した。
学ぶべきことが多かった基調講演を終え、西原清大分支部長に司会をお願いした【トレナーディスカッション】ではパネラーには基調講演を行った両名と、ゲストパネラーの中村将則氏3名が普段現場に持ち込んでいるトレーナーバックを持ち寄って、競技特性(フルコンタクト・リミテッドコンタクト・ノンコンタクト)に外傷・障害の種類と競技による使用材料の違いや需要特性など、会場の受講者を巻き込み互いにディスカッションを行い、楽しく興味深い時間であった。
最後に今大会終了翌日、状況が厳しい中3社も参加いただいた展示企業の方から「子を持つ親として・部下を持つ会社員として講演内容が公私に渡って大変為になる内容で、仕事を忘れて傾聴させていただきました。」と言う嬉しい言葉をいただけた。
コロナ禍以降、ネット上には様々な情報が溢れ情報過多になっている感さえある今日この頃。JATAC九州ブロックとしてはやはり対面型講習会の良さ、限られた時間の中での講師とフロアーとの質疑のやり取りでの気付き、オンラインではない緊張感を大事にし、引き続き状況分析と対策を練り、今後も完全対面講習会開催を企画していきたい。
 活動報告者 |
 基調講演T
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 基調講演U |
 基調講演U |
 トレナーディスカッション |
 トレナーディスカッション
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 大会終了後、残った参加者と… |
posted by jatac-atc at 21:37|
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